こんにちは。今回はソフトバンク編です。もう既に紹介済みですが、2021シーズンは得失点差は+71でパリーグ1位だったものの、勝率は.500を切り、順位は4位で終わってしまいました。今回はセイバーメトリクスでの得点についての考え方についても解説しようと思います。これによってソフトバンクが得失点差やセイバーでは高評価なのにも関わらず、4位に終わった原因の理解が多少はできるかと思います。セイバーメトリクスを理解する上で重要な要素です。まずは、チームのスタッツを見ていきましょう。
得点564(2位)失点493(1位)得失点差+71(1位)です。21年シーズン前の下馬評通り得失点差は非常に優秀で勝率がここまで悪かったほうがなぜなのかという話にソフトバンクの場合がなりそうですね。まぁ簡単な話で、セイバーメトリクスにおいて10-1でリードしている状況での追加点と1-1から勝負を決める1点とで、価値が同じと考えているからです。つまり、死体蹴りをたくさんして、接戦でゲームを落としていると得失点差は大きくプラスなのにも関わらず、勝率が低いという現象が起きてしまいます。21年のソフトバンクはこのような戦い方をしてしまっていたということです。この得点の価値が状況によって同じと考えることに違和感がある方は多いかもしれません。そんな評価方法では実際の順位とずれるのは当然だと。なぜ同じと考えるのかについて、解説します。
1-1の場面の追加点と10-1のリード時の追加点では、その試合においての価値は誰が考えても前者の方が高いのは分かると思います。ただ、セイバーメトリクスにおいてはそのような状況別の価値をあえて排除して評価をしています。簡単に理解できる例で言えば、状況別に価値を変えてしまうと、その日の打撃成績が4打数1安打で、その1安打が1回表ノーアウトランナー無しで単打を打った人の評価と、同じく4打数1安打ながら、1-1の9回裏ツーアウト三塁から単打を放った人で、前者を過小評価してしまうことに問題があります。どう考えても、後者が打った状況を作りだしたのは、後者以外の要因で、彼が作った状況ではありません。後者はたまたまその状況で打っただけなのにも関わらず自分が作った以外の要因で後者を過大評価し、前者を過小評価するのはいかがなものでしょうか。
この例では、チームレベルでは、その状況を作ったのは自チームの誰かなのだからチーム単位では高評価するべきではないかと思うかもしれません。ではチームレベルの例として、極端な例ですがこんなものを考えてみましょう。
143試合行い、得点は85、失点はなんでもいいですが、500のチームがいたとします。このチームの勝敗は85勝58敗だったとします。勝利する時は必ず1-0で、敗戦時は0得点しかできず、大量点差で敗北しているにも関わらず、貯金は27のチームです。これが明らかに異常であることは誰でも直感的に理解できると思います。極端な例すぎるだろと思うかもしれませんが、同じことなんです。1-11で負けている時にその後0点で抑え続けても、その試合の勝敗にはほとんど関係しないかもしれません。1-11で負けているときに4点取っても勝利確率はあまり上がらないかもしれません。1-11で負けているとき、その後5失点して1-16となっても対してその試合においてはほぼ負けと決まっているかもしれません。しかし、チームの成績というのは個人の成績の集合です。個人の成績では、そのような状況になったのはその選手だけの要因ではありませんし、その選手が関与できないにも関わらず、状況によって貢献度が操作されていてはその選手の実力を測ることはできません。それでも、状況によって貢献度を変えて評価するとなると、誰かが必要以上にプラス評価を受ける、もしくは必要以上にマイナス評価を受けることとなります。それは誰でしょうか。個人単位でなくともチーム単位でプラス評価を与えるといっても、何度も言いますが、チームの成績は個人成績の集合です。個人の評価とチームの評価が一致しないんてことは正しく評価する上であってはいけません。だからどのような状況の失点、得点であっても過小評価、過大評価をしないのです。これは理解できない方向けの説明ですので、この例が正しい考え方ってわけではなく、あくまで解釈の一つとして考えてください。
ただ、以前ピタゴラス勝率の時も話したように得点と失点の差だけでそのチームの真の戦力を測ることには限界があります。得失点差+25の楽天が全体WAR1位なこともからも分かると思いますが。そこには注意です。
<先発>
本編です。今回からはk%などのセイバー指標だけでなく、ERA(防御率)IP(イニング)も載せます。
主な先発投手の指標(Aveはパリーグ先発平均)
k-bb%はどの選手も高く、非常に優秀な先発陣でしょう。ただ、IPに注目していただきたいのですが、規定投球回に到達したのは石川のみです。マルティネスはあと少しでした。なぜかというと、まず、レイとマルティネスは合流したのが開幕後、千賀は21初登板の途中で怪我で緊急降板で離脱し、7/6に復帰登板をするまで長期離脱しています。レイは合流後、後半戦が始まる前の段階で帰国し退団。東浜は開幕出遅れ。武田は7月に怪我離脱。和田は40歳、その他の投手は谷間投手。といった理由です。その石川も何試合もQSを達成しながらも勝ち星がついてこず、一度リリーフに回るなどシーズン全体としてやりくりに非常に苦労したシーズンとなりました。ただ、怪我人などが多いのはソフトバンクでは珍しくなく、もう離脱する前提で編成しているのでしょう。ただ、今季は先発、リリーフ、野手それぞれで多く、首脳陣の想像以上だったといった感じでしょうか。
表の上4人はほぼ全ての指標で優れており、22年こそ怪我なく回ることができれば非常に高い質の投球を見せてくれます。ただ、マルティネスは退団。レイは先日再契約したそうですが、武田もまた怪我前の投球が22年もできるかは分かりません。そして武田は近年は不振やけがに苦しみ、そのポテンシャルを十分に発揮できていません。千賀も5年契約を結びましたが、彼はメジャー志向が強く、その彼の意志を尊重して5年契約の途中でも契約破棄できるオプション付きの契約です。彼の22年にかける思いは強いでしょうし、彼の活躍次第では23年以降は彼の戦力は計算できないかもしれません。和田も年齢面で厳しく、東浜もパフォーマンスが安定しません。指標面では全体的に優れていても正直中長期的に計算できるかというと難しく、彼らのポテンシャルは素晴らしいものの、あまり計算ができない先発陣と言わざるを得ません。22年の確定枠は千賀レイ石川東浜などでしょうか。武田は怪我した後の情報がわからないので分かりません。(知ってたら教えてください)ここにいない優秀な先発候補としてはスチュワートJR,杉山でしょう。スチュワートは全米ドラ1投手ですが、色々あってソフトバンクが保有しています。非常に高い奪三振能力を持っていますが、一軍レベルでは制球に苦しんでいます。ストレートの平均球速は非常に高く、高いポテンシャルがうかがえます。こんなこと言ったらあれですが、まぁ正直見ればわかります。杉山も似たような課題です。ただ、彼の場合はスチュワートよりもさらに制球難に苦しんでいます。最速160キロを計測するなどの剛腕ですが、k%は28.3%ながら、bb%はなんと24.5%と非常に悪い数字です。これではさすがに厳しいです。ソフトバンクの投手全体に言えることなのですが、奪三振能力は高くても、コントロールが課題の選手が多いです。笠谷なんかも左腕ながら150キロを普通に計測できる優れたポテンシャルを持つ選手ですが、やはりコントロールが課題です。
22年の戦力は怪我や離脱する選手次第です。正直分かりません。どの選手も奪三振能力は魅力なのですが、チーム全体で怪我などが非常に多いです。千賀も高い確率でオフに退団するでしょうし、中長期的な面で見ても、制球で苦しんでいる選手たちが一皮むけなければなりません。
<リリーフ>
主なリリーフ投手の指標(Aveはパリーグリリーフ平均)
こちらもIPもみればわかりますが、最多投球回が45 1/3の岩嵜と非常にリリーフのやりくりに苦労しました。ソフトバンクはワンポイントリリーフが多いため、登板回数は多いのですが。例えば、津森は登板数で言えば45回です。モイネロ、森と盤石の勝ちパターンの二人を早々に失い、色んな選手がクローザー、セットアッパーに挑戦しましたが、正直非常に厳しかったです。チーム最多セーブは最後の最後で帰ってきた森で15Sで森も復帰後の成績は16回 0-3 6.19 13三振 10四球と非常に悪い成績でした。ソフトバンクはリリーフも選手の質は良くても選手が長く定着できないことが課題でしたが、21年はそれが顕著に表れたシーズンでした。リリーフは選手の負担が非常に高く、寿命が短いポジションで、酷使などがたびたび話題になるポジションです。ソフトバンクの離脱が多いのはリリーフ投手の扱いが雑だからなのではないかと考えます。やりくりが難しかったのは分かりますが、起用がうまく固定できず、その固定できていない要因が扱いの雑さなのではないかといった感想です。
オフにFAで又吉を獲得しましたが、その補償で岩嵜をリリースしてしまいました。又吉は今季66登板63.1イニングを投げ、3勝2敗 1.28でしたが、k%は16.7,BB%は9.0と正直どちらも良い数字とは言えません。また、彼の本拠地はバンテリンドームと非常に投手有利な球場で、HRも出にくい球場でしたが、Paypayドームは得点pfは高くありませんが、テラス設置後はHRは出やすい球場となっています。又吉の使い方はまだ分かりませんが、正直21年ほどの活躍はできなくても不思議ではないのかといったのが正直な感想です。ただ、それでもソフトバンクのリリーフ陣の指標が優秀であるのは間違いなく、モイネロも契約延長で合意しました。監督も変わる22年は起用を固めて盤石な勝ちパターンを形成したいです。森の復帰後の不調はクローザー問題から復帰を焦ったチームのミスで、調整不足が原因で劣化でないのならば、22年こそは彼の本領発揮に期待したいです。ここに名の上がっていない選手では16年ドラフト1位で5球団競合の上引き当てた田中正義などがようやく怪我からの不振からポテンシャルを発揮しはじめました。当時からの魅力でしたが非常に綺麗で強いストレートを投げます。モイネロ、板東、甲斐野、泉などそこそこ若くて能力の高い選手がそろっているため、延長12回制となる22年はその質の高いリリーフ陣のアドバンテージを発揮できそうです。岩嵜という良い選手は失ったものの、又吉も獲得し、他の選手も能力は高いのでリリーフが中長期的にも穴になる可能性は低いのかなといった感じです。あとは本当にずっと課題ですが、怪我ですね。
22年のソフトバンクは21年ほど投手陣に苦労する可能性は低いのかなと印象をなんとなく受けますが、投手チームTOPのWARの5.1を記録したマルティネスも抜けて武田、東浜などもどこまで計算できるか分からない投手たちも多いです。ソフトバンクが再び優勝を狙うには千賀、石川、レイの規定投球回達成かつ3人でWAR12くらいは達成したいところです。
コメント