【パリーグ戦力分析2022】楽天投手編【WARについての解説】

セイバー関連

今回は楽天編です。また、今回はWARに関しての算出やWARにおいて何が評価されるかなどの解説をしていきます。まずはチームの得点失点スタッツを見ていきましょう。

得点532(パ4位)失点507(パ3位)得失点差25(パ3位)勝率.516(パ3位)です。

得失点差だけで考えるとリーグの真ん中らへんの戦力なのかなといった印象ですが、チームwarで見ると、印象は一変します。なんと野手warは12球団1位です。投手は6位で、リーグ内でも4位ですが、上位と大きな差はありません。そして投手と野手の総合のwarは12球団でも1位です。本来12球団で比較するのはあまり適切ではないんですけど、そちらの方がインパクトがあると思ったので。要するにwarではパリーグ1位だということです。なぜこんなことが起きるのか今回は簡単に説明しようと思います。そして、この解説は僕の個人的なセイバーメトリクスへの解釈の元の解説ですので、正確性は保証できません。申し訳ないです。ですが、素人の一個人としてはそれなりに知識があるほうだと自負しているため、僕の解釈に大きな破綻はないと思ってもらって大丈夫だと思います。

<野手WARの算出について理解したいこと>

まず野手warですが、楽天の野手は捕手以外で大きな穴がありません。捕手自体も穴といえば穴ですが、大穴ではありません。従来の一般的な打撃スタッツや印象だけだと目立つ選手は少ないかもしれませんが。そして、野手のwarの算出において大きな役割を果たすのが、打撃と守備です。まぁ当たり前ですね。今回は守備については詳しく語りませんが、打撃評価について詳しくわかりやすく解説します。そして、打撃で個人的にもっとも大事な要素と考えているのは出塁率とOPSです。これとリーグ平均がわかれば、そのチームの打力がどれくらいなのか分かると思ってもらってもいいです。wOBAだのwRC+だの複雑な数式も用いて算出される指標も分かりやすいのですが、理解しないといけないことが多いです。誰でもわかる、誰でも算出可能な出塁率とOPS、リーグ平均だけでも理解できることに意味があると考えています。では、なぜこの二要素が重要なのかって話です。

出塁率=アウトにならない確率というのは再三話してきたことですが、アウトにならないことにどれだけ意義があるのかをパっと理解できる図表がこちらです。

YouTubeチャンネル「DELTA TV」様より引用 画像クリックで動画に飛べます。

こちらはアウトカウントと走者状況によって24個の区分をしてその状況でどれだけの得点が見込めるのかというデータです。表を見ればわかりますが、どんな状況においても出塁することで得点期待値は上昇しています。これがアウトにならないということの価値です。もちろん、実戦では、四球狙いの出塁よりも犠飛や犠打や打点が欲しい場面などが存在しますが、そのようなシチュエーションもすべて含めて平均化していったときは出塁率というのは大きな価値があることが理解いただけるかと思います。

そしてOPSです。最近ではすっかりお馴染みとなりましたこの指標ですが、得点と非常に強い相関がありながらも、非常に簡単に算出できるため、有効かつ簡単に打者の実力がわかるということで有名です。リンク先にも書いてありますが、非常に強い相関と言っていますが、具体的な数値としては決定係数が0.90を超えるということです。統計学を全く知らない方は決定係数が分からないかもしれませんが、相関を表す指標で0が最低で、1が最大で1に近づくほど相関が強い指標と思ってもらって大丈夫です。

しかし、いくら出塁率が高くても、長打が少なく、長打率の低いチームよりもそれよりは若干出塁率が少なく、本塁打含む長打が多く、長打率はかなり高いチームの方が得点が増えそうなのはなんとなくイメージできるかと思います。なので、長打率も、OPSも重要なわけです。じゃあ最初からOPSだけ見ればいいと思うかもしれませんが、そう簡単ではありません。こちらの選手の打撃成績を比較してみます。

2019年の打撃成績

こちらは2019年の同じリーグかつほぼ同じようなOPSの二人の打撃成績比較です。ここで問題です。どちらの選手がwRAA(平均的な選手と比べてどれだけ得点を増やしたかを示す指標)が高いでしょうか。微差ではありますが、井上のほうがOPSは高いですね。そして両者とも出塁率は十分高いと言えます。(2019パリーグ平均出塁率:.326)

ここまで丁寧に振ってしまったら勘づいてしまうと思いますが、正解は近藤です。数値でどれだけ差があるかというと、井上:15.9、近藤:25.8です。これには驚いた方は多いかもしれません。この差はやはり出塁率が大きく関係しています。また、こちらのwRAAは球場による補正を行っていませんが、wRC+(パークファクターによる補正を行った打撃指標で100が平均。例えば、ある選手のこの値が125ならば、その選手は平均的な選手と比べて1.25倍の貢献を果たしたといえる)でも、井上は131、近藤は141です。このように同じようなOPSなら、出塁率の高いほうが、セイバー的には評価されると基本的には考えてもらって構いません。まぁwRAAは積み上げ指標なので、ここまで差が大きいのは近藤の方が打席が100打席近く多いからっていうのもあるのですが。それでもwOBAは近藤の方が0.014高いので、セイバー的に近藤の評価が高いって事実は一緒です。

少し補足ですが、チームにとって長打力が不足しているならば井上のような選手が、チームがリードオフマンタイプ(近藤がリードオフマンタイプかは疑問ですがそういうことにしておいてください)が必要ならば近藤が必要でしょうし、この差であれば、これだけでどのチームにとっても近藤のほうが必ずしも優秀とは限らないでしょうし、あくまでチーム状況をまったく考慮していないセイバーでの評価ということだけとめておいてください。つまり、wOBAでの評価だけがどの場合でも絶対ではないということです。特に21年の楽天のようなチームに必要だったのは長打力です。それについてはあとで話します。

野手WARの評価の二大要素である守備に関しては、現状はUZRを見てくださいといった感じですね。この出塁率、OPS、UZRが優秀だから楽天の野手WARが高いのです。平均との差や球場による補正などは野手編でもう少し詳しく触れていきます。UZRという指標の数字の妥当性に疑問がある方もいるかもしれません。当然ですね。守備力を定量化するのは非常に難しいです。これは自分の個人的な見解ですが、UZRも真にその選手の守備力を数値化できているとは思っていません。ただ、その算出において、どのような考えのもとでどのような数字の操作を行うのかを理解することが統計学においては非常に大事なことです。リンクを二つ貼っておきますが、これらを見ればUZRのほとんどは理解できるかと思いますので興味があればどうぞ。

UZRの算出について:https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20026

https://www.youtube.com/watch?v=gME8t3wcCSU&t=11s&ab_channel=DELTATV


そして、これは注意ですが、あくまでこれはDELTA社においてのUZRの算出です。別のサイトでは別の算出式を用いて行われているはずです。基本的には同じだと思いますが、細部でそのサイト独自のバイアス除去のための操作などが行われているはずです。DELTAでこうだからDELTAが正しいとかそんなことはないのです。その数値に至るまでの考え方や数値の操作の妥当性を知らないことには評価できません。これは統計学の話以外でもいろんなことに落とし込めることですが、多角的視点からものごとを見た方がいいです。一個の知りたい情報に対して、一つのサイトだけで知識を得るのではなく、色んなサイトから情報収集したほうが真に知りたい本質に近づくはずです。このサイトを見ている皆さんも僕の話を鵜吞みにするのではなく、色んな意見を見たうえで、僕の意見の妥当性とかを自分で考えましょう。

そして、投手WARに関してですが、簡単な説明を。投手における三大指標は被本塁打率、奪三振率、与四球率です。これはすでに話してきたことですね。なぜなのかという話には年度間相関というものの関係が大きいです。リンク先を読めばほとんどわかるかと思います。しかし、疑問もあるかと思います。被本塁打率の相関はがそこまで大きないのではないかという話です。実際その通りですし、実際その通りでそこまで投手の能力だけでその年の被本塁打率をコントロールできるわけではないです。正直奪三振能力と四死球率だけで長期的なその投手の能力はわかってしまいます。

じゃあなんで入っているんだという話ですが、WARはその選手の能力の予測とともにその年のパフォーマンスを評価する指標です。(予測で使うには正直適切ではないですし、それに重きをおいてるわけではないですが)この二要素が優秀であったとしてもその年の成績が選手はたくさんいます。その選手の成績が悪いのは基本的に被打率や被本塁打率が高いからと考えるしかありません。その年のパフォーマンスも評価しなくてはいけないのにこの要素を全て無視してWARを算出するのは流石に強引です。そして、被安打の中でも本塁打は味方の守備力に依存しないため、三大要素として主にFIPなどの計算に用いられているのです。

分かりやすく説明したつもりですが、正確な話もしなきゃいけないのでお勉強みたいでつまらない話も多かったかもしれません。お疲れ様です。やっと本編です。

<先発>

主な先発投手の指標(Aveはパリーグ先発平均)

先発登板時のみの成績で集計

ほとんどの選手のk%,bb%が優秀です。そしてこの中で規定投球回に到達した岸、田中、則本がいるなど非常に優れた先発陣と言えます。が、注目したいのはHR/9です。規定投球回到達者三人が全員HR/9が平均よりも悪い数値を示していて、その他の選手も平均と比べて突出して良いわけではありません。

そして、21年の楽天本拠地の楽天生命パーク宮城のpfは極端に投高打低の数値を示しています。その中でも本塁打pfはパリーグの中でもかなり低い値を示しており、非常に本塁打というイベントが発生しにくかった球場なのです。にも関わらず、HR/9の値があまり良くないことから楽天先発陣はk-bb%などの数値的にはもっと素晴らしいWARが出てもおかしくないのですが、あまり伸びなかった要因はここらへんでしょう。

では、k-bb%が優秀な楽天先発陣は22年ではもっとパフォーマンスを出せるのかというと難しいところです。それには年齢が関係しています。22年度で田中は34,則本は32,岸は38,涌井は36です。田中、則本は年齢的にはまだ大丈夫と言えそうですが、岸と涌井は急にパフォーマンスが落ちても全く不思議ではありません。現に彼らは21年は不調期にかなり悩まされましたし、涌井に関しては8月から10月の間で約2か月間登板がありません。そして、復帰してからはすべてリリーフの登板です。彼らがダメな場合のローテを埋める選手たちは塩見、弓削、釜田、藤井、高田などになりますが、二軍成績のk/9やbb/9で見ても突出したものではなく、彼らの穴を埋める存在に現在なっているとは正直考えにくいです。高年齢化する先発陣がどこまでもつのかが楽天の22年シーズンの鍵となりそうです。正直開幕して見ないと分かりませんけどね。

<リリーフ>

主なリリーフ投手の指標(Aveはパリーグリリーフ平均)

今回はイニング(IP)と防御(ERA)をのせました。

k-bb%は優秀な選手が多いです。HR/9も概ね優秀です。主に勝ちパターンだったのは酒井宋松井で松井離脱以降はクローザーは苦労しましたが、安樂、宋、酒井で回していました。リリーフのwarはパリーグ全体4位ですが、1位と大きく離されているわけではありませんし、warは積み上げ指標のため、量が多い方が基本的には有利です。楽天リリーフのイニング消化は438.1イニングでしたが、これはリリーフwar1位のロッテよりも26イニングぐらい低いイニング消費です。その差も大きくないため順位にこだわる必要はありません。20年はリリーフにかなり苦戦しましたが、21年はかなり指標、防御率、敗戦数含めて改善傾向にあったと言えます。

楽天リリーフのスタッツ

勝ちパターンとしての起用が少なかった森原西口ですが、指標、防御率ともに良い数字です。22年がどのような勝ちパターンを形成するのかは正直分かりませんが、特に致命的なリリースなどもなく、恐らくリリーフに大きな穴は21年もないでしょうし、先発陣と比べても比較的若い選手が多いので、22年もリリーフに苦労する可能性は低いでしょう。

しかし、奪三振や与四球といった指標は年度間相関が強く、その選手の実力が反映されやすいとはいっても、年度をまたいで年齢以外の要因で指標がすべて劣化する選手も普通にいますし、ただでさえサンプル(投球回)が少ないので指標すらたまたま、出来過ぎの可能性はありますので、あまりに過信するのは注意が必要です。

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