【パリーグ戦力分析2022】楽天野手編

戦力分析野手編

こんにちは。今回は野手編です。楽天の野手WARは全体1位だという話は既に話した通りで、チーム全体のwarも1位だという話はしたと思います。では、2021楽天が貯金4、勝率3位で終わってしまった理由がなんなのかも少し話せたらなと思います。

<捕手>

シーズン終了時点の数字ではないので最終的な数字とはずれがあります

こちらの表はポジション別のwRAAです。リーグの中でもかなり捕手はマイナスなことが分かりますね。主に出場したのは太田と炭谷です。シーズン途中で炭谷を交換要員なしのトレードで獲得しました。それ以降は炭谷の出場が増えました。太田は2018年ドラフトで獲得した選手ですが、

2019 .279/.271/.550 2020 .301/.323/.624 (出塁率/長打率/OPS)と打撃面は順調にステップアップしていたように見えましたが、2021年は .260/.254/.515と打撃でかなり苦しんでしまいました。盗塁阻止率は2021年は.379と優秀で捕手版UZR評価でもそこまで悪い評価ではありません。しかし、表のようにかなり打撃面は厳しい数字です。楽天首脳陣としては今期は太田が打撃面ではリーグ平均以上の打力を発揮してくれて、正捕手として育てるつもりだったのでしょうが、今期は苦しんでしまいました。炭谷のトレード獲得も納得でしょうか。しかし、炭谷は44試合の出場ながら、太田以下のOPSを記録してしまいました。そして楽天は打撃面は期待できる田中貴也などを保有していますが、正直層も薄いうえにパリーグの平均的レベルに到達していると断言できる捕手がいない状況です。早急に補強が必要なポジションですが、2021オフFA市場に捕手はおらず、トレードで正捕手クラスを獲得すること自体も難しいです。そのため、ドラフトで強打期待の大卒捕手の安田を獲得しました。キャンプ情報でも柵越えを連発しています。2022年の起用法は分かりかねますが、安田が将来的に楽天の穴を埋めてくれることに期待しましょう。

<一塁手>

鈴木が一塁手として521打席に立ちました。出塁率は.343と(リーグ平均.315)高い出塁率とそれなりに長打を打ち、OPS.720と打撃面でもそれなりの貢献を果たしました。UZRも2.9とそれなりの貢献を果たしました。WARでもそこまで大きい数字ではないもののまぁそれなりの数字ということで、まぁまぁ貢献したと言えます。本当にまぁまぁ優秀という評価が適当な気がします。

<二塁手>

浅村が多く出場しました。まぁ説明不要ですね。21年はOPS的には.817と浅村にしてはあまり大きい数字ではない気もしますが、出塁率.395と非常に高く、出塁能力の高さから打撃面でかなり大きなプラスを記録しました。西武時代の通算のBB%は6.39%とあまり高くないですが、楽天移籍後のBB%は16.2%とかなりアプローチが変わったことが分かります。守備面ではUZRであまりいい数字ではないものの、その高い打撃能力でカバーできていてチーム野手トップの4.9を記録しています。守備面にすでにだいぶがたがきている気がしますが、高い打力でカバーしてくれるでしょうし、22年もwar4.0~6.0程度を期待したいところです。

<三塁手>

茂木が多く出場しましたが、彼は体調面の関係から、全試合出場は難しく、鈴木もサードとして103打席に立ちました。茂木は.343/.427/.770と投高打低の楽天生命パークを本拠地としては高い打撃能力でそれなりの貢献を果たしました。そして守備面ではGG獲得とはならなかったものの、UZRでは12球団トップの数字を記録し、守備面でもかなりの貢献を果たし、120試合の出場ながら、浅村と同じくWAR4.9と高い貢献を果たしました。体調面の不安もありながらも毎年多く試合には出場できているのでおそらく22年以降も楽天のサードを支えてくれるでしょう。

<遊撃手>

小深田が多く出場しました。20年は惜しくも新人王を逃してしまいましたが、高い貢献をみせ、21年はそれ以上の貢献を期待したのでしょうが、序盤からかなり打撃で苦しみ、最終的な出塁率とOPSも.320/.640とあまり良い数字ではなく、守備面でも12球団最低クラスの守備評価をうけてしまいました。後半戦は山﨑剛が守備面でも打撃面でも高い貢献をみせ、56試合の出場ながらそれなりのWARを稼ぎました。22年以降も小深田ともに高いレベルで競争し、正遊撃手の座をつかみ取ってほしいものです。

<左翼手>

楽天の生え抜き初の20本塁打や、生え抜き初の打点王達成を果たした島内が多く出場しました。.385/.477/.863と高いOPSと高い出塁率で主に打撃で高い貢献を果たしました。守備面ではほぼリーグ平均レベルの守備力で、キャリアトップのwarを記録しました。2016年から連続で100試合以上に出場し続けており、来年で33歳となる年ですが、まだ数年は今のパフォーマンスを維持できるでしょうし、22年も高い貢献をしてくれるはずです。

<中堅手>

辰己が多く出場しました。辰己の打撃成績は.326/.345/.671とOPSはパークファクター込みでリーグ平均レベル(.683)で、打撃面でのプラスはあまり大きくありませんが、守備能力の高さから、先ほどからたびたび紹介してますが、DELTAフィールディングアワードではトップの評価を受け、UZRでも中堅手トップの記録でした。リーグ平均レベルの打力とリーグトップクラスの守備力を併せ持てば、当然WARもそれなりの数字が出ます。また2018ドラフトから獲得した選手ですが、まだ若いため、打撃のアプローチも改善も期待できます。中長期的にも楽天がセンターに困ることは少なさそうです。

<右翼手>

多く守ったのは岡島ですが、チーム全体としてはライトのwRAAではマイナスを記録しています。これは岡島がライトとして試合に出場したのが98試合にとどまっており、ディクソン、田中、小郷など一軍レベルの打力ではない打者がそれぞれ出場機会があったためです。岡島自体の打撃は120試合に出場し、.331/.414/.745とまぁまぁプラスを記録しました。外野守備評価でも、ライトトップの守備評価を受けました。ただ、正直22年以降も岡島が楽天のライトを埋めてくれるかというと少し疑問です。というのも、岡島は規定打席に立つのは2016年以来です。それだけでも実力に疑問が残りますが、warがプラスになるのは17年以来で、なかなかそのパフォーマンスを維持できていません。WARは内容と量が伴って初めて高い評価を受けますが、たまたまいい数値が出ることもあれば、たまたま悪い数値が出ることも両方あります。この年のwarが高いからこれが真に選手の実力を表した数字ではないという話です。特に外野のUZRはその傾向が強く、岡島が22年も21シーズンのようなパフォーマンスを発揮できる前提での編成を組むのは危険だと考えています。もちろん、22年も高い貢献を果たす可能性はありますが。その中で、新外国人でおそらく、DH、外野手枠で使うであろうマルモレホスを獲得しました。21年はディクソン、カスティーヨともにあたり外国人とは言い難く、warでもマイナスを記録しています。22年の新外国人補強はうまくいくでしょうか。そして、岡島は22年も勝利に貢献できるでしょうか。オープン戦や開幕が楽しみですね。

<指名打者>

一番DHとして出場したのは島内ですが、あまり多くありませんし、固定できていません。wRAAでもマイナスを記録するなどあまり有効にDHを活用できていません。新外国人で先ほどの選手ともう一人ギッテンスを獲得しましたが彼や安田がDHでの出場が考えられそうです。正直、開幕してみないと分かりませんし、新外国人の来日が遅れるため、現状もおそらくDHは空いたままでしょう。シーズン途中でDHの穴を埋める選手が定着してほしいところです。

<3位の原因>

WARも示すように比較的優秀な野手陣でしょう。投手も奪三振と与四球関連の指標は素晴らしいです。その中で、パリーグNo1のwarを記録しながら得失点差が+25にとどまり、3位で終わってしまった理由ですが、結論を一言で片付けるのは難しいです。投手に関しては奪三振能力、コントロール、被本塁打で投手能力のほとんどは説明できますが、運の影響も多分にあるため失点数やWAR的にも21年はリーグの真ん中ぐらいの成績という説明でだいたい大丈夫だと思いますが、問題は野手でしょう。打低球場にしては点とれたといっても得失点差+25は優勝するに妥当な数字ではありません。

楽天の得点力が低かった原因の一つは長打力の無さです。主に打線でランナーを返す役割を担っていたのは浅村、島内だったはずです。彼らは十分優秀な打者ですが、21年は長打力が他の得点力の高いチームの打者に比べ小さかったです。

当たり前なのですが、野球の得点は線形ではありません。もう少し砕けた言い方をすれば長打がないと、どれだけ単打や四球を積み重ねても得点はできないということです。

これはLWTS(Linear Weights)というwOBAの評価の基礎となっている考え方とは異なる考え方です。イメージしやすい具体例で説明しましょう。LWTSの説明はまた今度します。リンクを貼っておくので参考にどうぞ。

NPBの2013~2015のデータから算出

こちらの表はそれぞれの出塁項目の得点価値ですが、こちらを使って説明します。例えば、単打を同じイニングに3本放っても得点できない場合はありますが、単打3本の平均的な価値はこちらの表を使って算出すると、1.311となります。ホームランの平均的な価値である1.408と0.1しか差がありませんが、得点は0と1ということで差が付きます。

この例を出されて言いたい反論は分かります。運が悪いだけとか極端すぎるとかそういうことでしょう。ただ、野球というゲームは3アウト単位で展開していくため、試合の中で単打が分散してしまうと得点がしづらいのです。

例えば、打者単位では4打数4安打単打4本の打者の方が、4打数1安打1本塁打の打者よりも優秀なのは明らかです。しかし、これをチーム単位で落とし込んでみると、9イニングで単打4本しか放っていない場合、得点の可能性が低いことはイメージできると思います。しかし、9イニングで安打1本だとしても、1本塁打なら必ず1得点はすることができます。効率良く得点するために長打力は必須なのです。

個人的にこの説明よりも良い説明ができるはずなので後で線形とか非線形とかの話はしようと思います。

そして、ISOという(長打率-打率)の長打力を調べる指標では、楽天は.120と12球団中10位、パリーグ内では5位と他球団に比べ長打力が劣っていたことが分かります。楽天打線に足りないのは長打力です。その点で、21年は全く機能しなかった外国人に期待するのは当然でしょう。

そして今まで野手成績で走塁面に関してガン無視していましたが、もちろん成績に関係しますし、走塁で得点に貢献することも可能です。ただ、打撃、守備に比べるとどうしても比重が小さく、プラスを出している選手でも微々たるものです。そのため無視していました。セイバーメトリクスには走塁の総合評価を示す指標としてBsRというものがあります。BsRはUBR(盗塁以外での走塁での得点貢献とwSB(盗塁での得点貢献)を合算したものです。そして楽天はBsRの数値がリーグで断トツのマイナスを記録していてリーグトップのロッテとの差を取ると、32.7であり、ロッテの走塁での得点貢献度がずば抜けているにしても、楽天の走塁面でのマイナスはひどいです。BsRの単位は得点であり、楽天は走塁面で得点をかなり損しています。得失点差のプラスが小さいのには走塁面も多少なりともかかわっているわけです。

総評ですが、私の21年オフ現在の楽天の戦力位置づけとしてはリーグ真ん中ちょっと上くらいという評価にしておきます。22年の成績予測込みでの考えです。先発陣の高年齢化に対しての層の薄さ、そして野手は内野陣は強力なものの、島内以外の外野の攻撃力に疑問符がつきます。岡島も22年も活躍できるかは分かりません。その中で通算でも高い出塁率を誇る西川遥輝を獲得しました。ただ、守備に難点がある彼が起用できそうなのはレフトぐらいで、その場合は島内がライトかDHに回ることになります。辰己も今はリーグ平均レベルの出塁率ですが、上がる可能性も下がる可能性もあります。守備がずば抜けているため大穴は作らないでしょうが、打撃がこれ以上悪くなると平気でwar0台になりかねません。と、悪い方向への予測や、良い方向への予測込みでこの位置です。

まだ、ソフトバンク、日本ハム、西武が残っていますが、先に言っちゃうと22年のパリーグは現在の戦力では抜けているチームがおらず、圧倒的な優勝候補というものがいないと考えています。(もちろん若手など新戦力の台頭次第では、圧倒的な差を作るチームが現れる可能性もあります)そのため、リーグ真ん中ちょっと上くらいという評価が実は最高評価だったりします。野手はかなり困っている右の大砲候補で吉野をドラフトで獲得するなど、二軍では圧倒的な成績の黒川など優秀なプロスペクトを抱えていますが、投手は厳しいです。彼らが本格化し始める段階、もしくはその前に優勝を狙わないと、うまく世代交代ができず、再び再建期に入らざるを得ない可能性もあります。強力な野手陣も島内浅村鈴木など、これから下降線に入ってもおかしくない年齢に差し掛かっています。すでに勝負期にいるチームのため、22年、23年こそ優勝を手にしたいものです。

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