各球団に「育成力」の差があるのか?

セイバー関連

正直僕はこの「育成力」というかなりふわふわしたものの存在に対してかなり懐疑的です。これは完全に僕の持論なのですが、真に優秀な選手であるならばどこの球団に入ろうとも、必ず結果を出すと思っているからです。特に情報化社会となった現在では。

残念ながら僕は投球や打撃の技術論を語るほどの知識も経験もなく、メカニクス系の話には疎いため、YouTubeや各ネットで手に入る技術の話の有用性や正しさを僕の判断で多くを語ることはできません。ただ、それでも確からしい理論や誰にでも当てはまる共通の理論も存在するはずであり、優秀な選手ならばその情報を獲得すること、それをどう自分の体にアジャストしていくかも時間はかかったとしてもできるはずです。

真に優秀ならば、入ってしまった球団に優秀な技術的指導ができる人材が存在しなくとも、自分でどうすれば良いのかを判断し、どれが正解かを考える力を有しているはずで、その考える能力がなくとも、センスだけで再現性を持って結果を残せるはずなのではないかという持論を持っているので、懐疑的というわけです。

この仮説自体は僕の人生の経験則から来ているだけなので全くアテにしなくていいです。優秀なコーチがいなければ育てられないものの、しかしながらその指導がハマれば結果を残せるような選手もまた存在しているとも考えています。そして、そのコーチがいなければ再現性がないので、チームとして様々な選手を戦力化できないのではないかという意見もあるでしょう。

しかしながら僕は僕の仮説が正しいと思ってるので、意見の合わない人とは会話が成立しません。これは建設的ではないのでなんとか検証できないかと考えたわけです。

どうやって検証すれば良いのか?

しかしながらこの検証は非常に考慮すべきことが多いので難しいです。

第一にそもそもの「素材の差」は明確に存在するはずです。これが仮に全く存在しないのだとすれば優秀な指導をできる球団はどんな選手を獲得しようとも必ず戦力化できてしまうはずだからです。しかし実際にはそんなことは100%あり得ません。

この問題を対処するにはサンプル数を非常に広げる必要があります。素材の問題やドラフトの運や目利きに関しても長いスパンで見ればある程度平均化されるであろうという統計学の基礎的な話です。ドラフト時点から明らかに優秀である選手を除外する方法もありますが、どこで線引きするのかが難しい上にそのように見られていた選手でも戦力化できない事例もままあるためこの方法はなしです。

第二に何をもって「戦力化」できたとみなすか。これも非常にシビアな問題です。NPBには2013年以降の総合指標WARへのアクセスができないですが、これ以降の選手となると非常にサンプルが小さくなってしまう上にまだキャリアの発展途上だという選手も多数存在するはずで、WARで決めるのは非現実的です。また、1シーズンだけ大活躍したが、それ以外はサッパリな選手と毎シーズンWAR1.0前後の活躍を長くした選手の選手の評価はかなり別れます。1番シンプルな方法はそのチームの全選手のWARの累積の差をチームごとで見る方法なんですけど、それができません。

目下最大の難点はこの二点ですが、よく考えたらNPBレベルでこの議題を論ずる意味がない気がします。MLBはWARはかなり遡ってアクセス可能な上に指名選手も非常に多いのでサンプル数にも困りません。それに少なくともMLBでこの差が存在するのだとすれば、育成力というものの存在が認められるということになります。即ちNPBでも育成力の差があるとは言えませんが、NPBで検証する方法が思い浮かびませんでしたので断念しました。

ということで今回はMLBチームを使って検証することとします。

ここで新たに発生する問題として、MLBでは移籍が激しく、移籍先で華を咲かせる選手もたくさんいるわけで、それもドラフト指名した球団の功績としてWARを計算してしまうのはいかがなものかという問題も存在します。ただ、この辺まで考慮していると非常に煩雑な検証となってしまうので、大量のサンプルがあればその辺もある程度平均化されるはずであるという雑な発想であえてやってみます。

検証方法

1996年から2020年までにMLB球団に指名された全選手が対象。(レイズ、Dバックスがドラフトに参加するようになった年から)その全選手がMLBで2021年シーズン終了時点で通算で稼いだWARをチーム別に合計し、その通算WARを比較する。

データの入手元はBaseball-Referenceのdraft検索機能で、Picks by Franchise/Year (& actives)というソート機能を使う。なおドラフト時期はJune固定とする。

WARはBaseball-ReferenceのrWARで、carrerWARを使用する。

検証結果と考察

結果はこちらです。一応もっと差が小さくなると思ってたので、こちらの結果は意外でした。検定(統計学において有意な差があるのかどうかを検証するもの)を行おうと思っていましたが、検定するまでもなく明らかに差があります。

WARの平均は533です。最少はジャイアンツの348.8で最高はレッドソックスの788.2でした。この期間における各チームのn(指名選手の数)は大体1100はあるため、流石にサンプルが不足しているということはないはずです。

しかし、検証方法を読んでくれた方はお分かりでしょうが、相当適当な検証を行っています。挙げてたらキリがないですが、FA移籍後の選手のWARも生え抜き球団に加算されますし、プロスペクトをMLBデビューする前にトレードで放出したような場合でも生え抜き球団に加算されます。

確かにこれだけのサンプルがあれば、ドラフトで獲得した選手の元々のポテンシャルの差は相当小さくなっているはずですので、検証前に懸念していた指名選手のポテンシャルの差という「育成力」とは別に絡んでくる問題はある程度克服できているはずです。

しかし、やはりMLBで検証を行ったことで予想された移籍が激しい問題などは大きく絡んできているように思えます。特にトッププロスペクトのトレードは大きい問題です。

この問題をどのように解消するかは非常に難しいです。というか最初はあえて考慮しませんでした。なぜならば、トレードで出したがトレードで出した段階で既にMLBで活躍するレベルまで到達していてその後移籍先で何か特別なことをしなくても活躍できていたという可能性も十分あります。

そのような選手に対して移籍先の球団で何かを掴んだとするのはいかがなものでしょうか。移籍前の細かい成績を参照してもいいのですが、そんなことをやっていたら僕の人生がそれだけで終わるので現実的には無理です。

ドラフト指名選手のWAR比較”だけ”で「育成力の差」を判断するのはあまり正しい考え方ではないと思うのが現在の僕の見解です。ただ、少なくとも1996~2020年の期間内で球団によってドラフト指名選手の通算rWARに差があったのは間違いないです。

今後なんかいい検証方法を考えたり見つけられたらやってみたいと思います。最終的には「育成力」を定量化できたら面白いですけど、どうでしょうかね。考慮するものが多すぎる上に考慮した結果よくわからない結果になりそうな気がしますけど。何か気づいたことがあれば意見も下さい。

 

 

 

 

 

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