【投手指標】K/9 vs K% K/BB vs K-BB%

セイバー関連

そんな大層な話でもないんですけど、日本語だと指摘している文献があんまりなかったので紹介しとこうかなと思います。日本人でもTwitterならここら辺に関してツイートしている方は多少いたんですけどね。

英語ではこれに関する検証の記事はいっぱいあるので英語できる方は読んでみてもいいと思います。参考としてFangraphsの記事のリンクを貼っておきます。ちなみに僕は英語(特に学術的な話になる英語)は全く読めないのであんまり真面目には読んでません。

なんかK/9とK/BBとK%がどれがERAの予測に向いてるか回帰分析してるっぽいです。多分。その話もちょっとしようかなと思います。

奪三振と与四球が投手の能力を表す上で重要な要素であるのはみなさんご承知だと思います。ただ、僕のサイトや1.02のサイトなんかでは投手指標ではどちらかというとメジャーな奪三振率(K/9)やK/BBよりもK%やK-BB%を使っています。それがなんでかって話です。

結論から言えば、投手の能力を表す指標としてはそっちの方が適切だからです。以上です。

これだけでは味気ないので体系的な話とともに検証もしていこうかなと思います。

なぜK%やK-BB%の方が優れているのか?

そもそも、K%とは、奪三振/対戦打者 で求まります。K/9よりも算出は簡単なんですよね。その辺の話も後のセクションでします。具体例を使って話します。

投手A 24.2回 対戦打者数117 奪三振30 K/9 10.95 K% 25.6

投手B 60回 対戦打者数247 奪三振70 K/9 10.5 K% 28.3

K/9では、Aの方が、Bよりも優れているということになってますね。しかし、K%では、約3%ほどBの方が高い割合で三振を奪っています。

例えば、1イニング投げて三振を一つ奪ったのを同条件として、その内の対戦打者数は5人と3人だとすると、3人と対戦し、一つの三振を奪った投手の方が内容がいいのは明らかですが、K/9はこれを区別していません。イニングを重ねていけばここまで大きな差はでませんが、投球内容をより適切に評価できるのはK%だと分かります。

ちなみに投手Aは21年の宮川哲で、投手Bは21年の平良です。

K-BB%とK/BBに関してもアプローチとしては同じです。今回タイトルに含まれていませんが、BB%とBB/9も同じ考えです。

同じK/BBでも失点期待値はどうなる?

K-BB%に関しては検証を用いて説明していこうと思います。八九余談さんのツイートを参考に検証します。そのツイートがこちら。

こちらを参考に、より丁寧にどちらが失点しづらい投手かを検証していきます。

ここですっ飛ばしている要素としては、三振と四球以外の打席結果が安打になるかそうでないかということにしかなっていません。ご自身でも指摘していますが、当然安打には長打が含まれます。今回はインプレー打球をゴロ、フライ、ライナーに分けて、それぞれの得点価値を重み付けしてみます。四球や三振も同様に重み付します。

仮定

両者ともにゴロ率 45% フライ率 45% ライナー率 10% 内野フライ率 10%         

失点期待値

ゴロ 0.036 内野フライ -0.124 外野フライ 0.132 ライナー 0.289  四球 0.297 三振 -0.108 本塁打 1.401

対戦打者数 610 被本塁打はともに10本

①の投手はインプレー打球は対戦打者のうちの60%から10を引いた数。つまり、356人の打者はインプレー打球になる。よって、ゴロの発生数は160、内野フライの発生数は16、外野フライは144、ライナーは36。

ここでこの投手の失点期待値を足し合わせると、45.4点。

②の投手も同様に算出すると、失点期待値を足し合わせた数字は57.5点。

三振、四球の割合以外の項目を全て同じと仮定しても12点も失点期待値に開きがあることが分かります。この12点という差をどう見るかは人それぞれですが、無視できない大きな差だと僕は考えています。

同じK/BBでは、K-BB%の高い方が、かなり失点しづらいことが分かりました。今度はK-BB%を固定して、K/BBをいじってみます。

① K% 20% BB% 5%

② K% 30% BB% 15%

これを先ほどと全く同じ仮定を利用して失点期待値を算出してみます。

①の失点期待値 51.45点 ②の失点期待値 51.56点

ほとんど変わらないという検証結果になりました。ですが、これらの投手をK/BBで評価してしまうと、K/BBが4である①の投手が②の投手に比べてかなり優秀であるというような評価になってしまいますが、重要なのはどちらが失点しにくい投手であるかという点のはずです。

もちろん、現実では、ゴロ率やフライ率は投手によって違いますし、その値は投手によってコントロールすることができます。ですが、あくまでK/BBで投手の優劣をつけようとすると、おおよそ見当違いの結論をうむこととなると思います。

なぜK-BB%やK%が浸透しないのか?

最後にちょっと別の話。

K/BBに関しては、算出がものすごく簡単で、そこそこの精度があるという点で浸透しても全く不思議ではないのですが、やはりBBで割るので、三振が取れなくても、四球さえ少なければとんでもない数値が出てしまいます。

例えば、21年の奥川はK/BBは9.1ととんでもない数値を記録していますが、K%は22.0%、K-BB%は19.6%と、非常に良い成績なのは間違いないのですが、より精度の高いK-BB%ではより良い数値を記録している投手は結構います。K/BBの傑出度ほど、K-BB%が傑出しているわけではありません。それにしても彼のBB%はすごいですね。

ですが、K%やBB%まで浸透しないのはなぜなのでしょうか。明らかに奪三振率や与四球率より算出は簡単です。

月並みな結論ですけど、投手のスタッツを紹介する時に投球回を載せることは多くても、対戦打者数を載せることが少ないからだと思います。そもそもとして慣れてないから直感で理解しづらいっていうバイアスがあるからだと思いますが、シーズン対戦打者が600人とか言われても多いのか少ないのか良く分かりませんよね。対して投球回は規定投球回というものの存在や防御率の算出にイニングが必要なことなどから、イニングを見るということにかなり慣れているということが大きいのだと思います。

対戦打者数のデータはNPB公式からも簡単に入手できるので別にそこまでハードルの高いデータではないのですが、やはり最初にK/9などが浸透してしまったので今更K%の方が良いとか言われても乗り換える気になれないのでしょうね。正直K%に関してはそこまで大きい差があるわけではありませんし。

K/BBに関しては明らかにK-BB%の方が投手の能力を測るのに適した指標ですが、こちらは二つの簡単に入手できるデータを割るだけで良いという簡単さが良いのでしょうね。OPSと同じことだと思います。

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