【UZR】指標などの数字に表れない価値とは?

セイバー関連

指標に対する反論としてよくある「この選手の指標はあんまり良くないけど数字に出ない価値がある」とかなんとかっていう指摘。これに対して僕が思うことの話です。

仮想敵(存在しない反論したい対象)を作って勝手に反論するのが嫌いなので具体的な例を使って論じていこうと思います。まぁネット見てれば見たことあるなって思う話だとは思うので別に出さなくても良いのかもしれませんが。

守備指標「UZR」は万能ではない。データではわからない“一歩目の速さ”と“グラブさばき”【アンチデータベースボール】

このような記事があったので引用させていただきます。

基本的には相対評価のUZRだが、データで可視化されすぎたことにより、守備における「本当のうまさ」の本質から離れている部分もある。この指標には、例えば一塁手のワンバン処理能力までは考慮されていない。また、この指標でマイナスの数値となっていても、ユーティリティプレイヤーとして利便性のある選手はいるが、評価されづらい部分があるだろう。菊池涼介や坂本勇人はこれまで驚異的なUZRの数値を叩き出していた。しかし30歳を超えて、UZRは以前よりも下降している。脚力も落ちてきているので、ピーク時に比べれば守備範囲も狭まる。数値が下降傾向なのは仕方がない。それでも両選手は2020年にキャリア最少の失策数を記録した(菊池:0・坂本:4)。さらに菊池のシーズン守備率10割・失策数0に関しては、二塁手としては史上初の快挙だった。全盛期ほどの守備範囲はないものの、熟練された守備力は30歳を超えても発揮され、守備範囲は多少狭まったとしても、グラブさばきといった捕球技術や打球判断能力の優れた選手に変わりないことがわかる。このようにデータだけではその選手の能力を測れない部分も出てくる。例えば打球が飛んできた際の一歩目の反応の速さだ。守備では重要な瞬発力であり各選手によって当然異なるが、現状はデータには反映されていない。

上記リンク一部引用

この一部を見ると、やはり疑問が残ります。よく分かりませんが、この記事は恐らく本の一部を引用した記事なので、この記事だけで筆者の意見のすべてを反映できていないのでしょうが。

最初に断っておきますが、この方の考え方の全てを否定するものではないですし、この方の言うところの守備の「本当のうまさ」の評価を否定するものでもありません。ただ、UZRの部分についてはこの記述の仕方だと誤解を生みそうだなというか正確ではないなとおもったので。そこについての話です。

まず、「守備範囲は多少狭まったとしても、グラブさばきといった捕球技術や打球判断能力の優れた選手に変わりないことがわかる。このようにデータだけではその選手の能力を測れない部分も出てくる。例えば打球が飛んできた際の一歩目の反応の速さだ。守備では重要な瞬発力であり各選手によって当然異なるが、現状はデータには反映されていない。」とのことですが、確かに、UZRの数値を見たところでその選手のどこが優れているのかはまでは分かりません。UZRを構成する要素である、RngRやDPRやErrRやARMといった指標を見て初めて何が良いのか多少分かります。しかし、このような要素の中には上記のような技術が反映されていないから、データでは分からない技術だと言っているのでしょう。

そもそものUZRの考え方として、「捕球技術」や「打球判断処理能力」の高さを評価するものではないです。UZRのアプローチとしては、そもそも守備の目的とは、アウトを稼ぐことによって、失点を防ぐことです。そのどれだけ失点を防ぐことができたかを得点の単位に変換して評価しようという考え方です。

より多くのアウトを稼ぐための「手段」として肩の強さ、捕球の上手さ、脚力、一歩目の速さ、ポジショニングなどの(挙げてたらキリがない)そういう技術があるだけで、それ自体を数値化するのが目的ではないですし、その必要性はないはずです。

仮に、先述したような技術が真に発揮されているならば、UZRのどこかの要素でそれが反映されているはずです。例えば、落ちた脚力をカバーできる卓越したポジショニング能力があるのならば、RngRの数値は落ちないはずです。このように技術は過程はどうあれなんらかの形で数値に現れるはずです。

菊池の守備範囲が狭くなったとありますが、ポジショニング能力の高さによって本来その能力がなければもっと下がっていたであろう守備範囲の衰えをカバーできているからこの数字なのかもしれません。技術が反映されていないというのは少し誤解を招く表現だと感じます。

そもそも上記の技術がいくら優れていても「アウト」に出来なければ守備の本来の目的を果たせていないので、プラス評価をできるわけありません。UZRは「手段」を評価する指標ではなく、守備本来の「目的」を果たせていたかを評価する指標です。

もちろん、UZRの数値の妥当性がどうとか、この要素を盛り込んで守備評価を行った方が適切だとか、そもそも守備本来の目的とかは守備の本当のうまさとは関係ないとかそういう議論はまた別の話になります。

この方の言う守備の「本当のうまさ」を僕が適切に言語化はできませんが、なんとなく言いたいことが分かるのも確かです。多分ですけど、「本当のうまさ」とは本稿でいうところの「手段」の評価のことを言っているのでしょう。正直僕としてもこれは分からないでもありません。浅村がUZRの数値を持ち出されて守備が下手と言われているとなんとなく違和感を僕は覚えます。ただ、真に守備が上手いならUZRの数値も同時に高くなるはずだという考え方も持っています。

選手が意識しなければいけないのはアウトを取るまでのその「手段」にありますからね。その「手段」の何の部分が劣っていたからアウトに出来なかったのかを考えることで、その練習をし、色んな状況でも対応できるようにすることが大事なわけで。

ただ、現在NPBにある指標の中で最も適切に守備評価を行えているとされている指標だからこそWARの評価に盛り込まれていたりしているわけです。数字のスポーツなのにも関わらず精度の高い守備能力の定量化はやはり非常に難しいですね。

 

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